備忘録

「同じ星をみている」感想

CURE1号掲載、由羅カイリ先生

ティムカの戴冠式直前に、地上組が招かれて王宮に行くという設定。
街を行く人々から奇異目で見られてうろたえているメルからカットイン。気丈なようでやっぱり甘えんぼなメルと、知性的で大人の心遣いあふれるエルンストの無邪気な仲の良さがかわいかった。嘘か真か城下のチャリタク売上NO.1を豪語するチャーリーのバイク騎乗姿もかっこいい(まだ正体は秘密らしい)。子供扱いされて戸惑ったりしながら、まっすぐ成長していこうというティムカももちろん魅力的。どのシーンもすごく楽しかった。

↓そして一番ツボだったのが、この全然噛み合ってないのに仲良さげな精神の教官と感性の教官。

王宮の中庭で即興詩を口ずさんでいるセイランから始まるひとくさりのシーン。効果音と共にそのそばを飛ぶナイフ。セイランが振り返る。
S:いきなりなにをするんだ、ヴィクトール!
V:すまん、コレだ。刺されたら大事だぞ
S:毒グモ?(ハッ)まさかこの王宮に陰謀が!?
V:いや、ここは生命あふれる熱帯の惑星だからな。もらわなかったのか?要注意生物リスト
S:…………(←もらったけど読んでない)
V:ぼんやりするなよ、セイラン。いついかなるときも身辺の安全確認を怠ってはならん
S:隊長……せっかくのおことばだけど、その美しい蜘蛛の毒で美しい詩に身をゆだねたまま死ぬことができるなら、それは僕の望むところなのさ
V:これをちゃんと読んでいれば、そんなことはいえないと思うがな

「陰謀が」とか一瞬で飛躍する夢想家のセイランとどこまでも現実的なヴィクトールのこの鮮やかなコントラスト。自分の価値観を信じて疑わないヴィクトールの無骨さも愛しいし、セイランが軽くからかいをこめて「隊長」なんて呼べちゃうというのも可愛い。

あと同じ星=聖地で、彼らが特殊な経験を共にしたことの比喩なんだなと理解。その「星」が年齢も職業も性格も全然違う彼らを、今もまだ結びつけている。だけど聖地の人たちは、一緒に過ごす間にどんなに親しい関係を築いたとしても、自分自身の顔を見ることが出来ないのと同じように、その星が見えない。だからここに登場しないしティムカのカウントの中に入っていないのだ、と思うとなんだかきゅうっとくるものがある。彼らは彼らで、見下ろすあの星々のどこかに井戸があるんだ、とひっそりと思うことがあったとしても。


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