ロザリア←コレット

天レク開始時、レイチェル視点

 レイチェルは扉の影で友人の手を引いた。
「アナタ、ホントに大丈夫?」
 華奢で大人しくって、聖獣との意思疎通くらいしか特技もないくせに、世界を救おうなんて大それた話だ。
「どれくらい勝算があるかとか、失敗したらどうなるかとか、ちゃんと考えてるんだよね!?」
 まったく、途中で行き倒れられちゃったらどうするつもりなんだろう。
「だって、ロザリアさまが」
 アンジェリークはふーっと深く深呼吸した。
「ロザリアさまが、私を必要としてくださってるのよ」
 頬を薄紅色に染めて、うっとりと言った。この子は絶対何か間違ってる。
「私が頼りだとおっしゃるの……」
 色仕掛けするのは止めて下さいって、怒鳴り込めるような相手ならまだいいんだけど。あっちはあっちでお嬢様育ち、ぜんっぜん自覚がなさそうなんだよなー。
「もういま死んでもいいくらい幸せなの」
 レイチェルはついに匙を投げた。
「ああ、そう……。死んだ気になれば結構色々できちゃうもんだよね。どうせなら有効活用してくれば? 今ここで死んでもせいぜい庭のこやしだしね!」
「うん、だから、行くわ。いってきます」
 そんな健気っぽい顔して笑っても、ワタシは男じゃないから騙されたりなんかしないけど、
「いってらっしゃい」
 思わず抱きしめてしまった。

(2009.06.02)

女王試験(SP2)

「そう、残念だわ。せっかくアドバイスしてあげようと思っていたのに」

 びっくりした。
 びっくりして、うろたえてしまって。
 退出の挨拶もままならぬままに出てきてしまった。
 あんなことを仰るなんて、思わなかった。
 動悸のする胸に両手をあてる。
 たった今背にした花のかんばぜを思い浮かべる。
 女王補佐官の部屋へは、すでに毎日のように判断を仰ぎに行っていた。自分でお考えなさいと引導を渡されるのは、今日か明日かと、慄くほどの毎日だった。

 私に頼られることをお嫌ではないと、ロザリア様の立場ではきっと、あんなにもはっきりと仰るべきではありませんでした。
 ああ、私は補佐官様が落胆して見せたその時に、手の届かない憧れと諦めることができなくなったのです。長い間、まさにその落胆されることをずっと恐れていたというのに。

(2009.01.13)


inserted by FC2 system